コラム(Q&A)

ホーム » コラム(Q&A) » 法律と税

法律と税

 * 質問部分をクリックすると、回答が表示されます。

    錯誤と税

  • 離婚に伴い、財産分与として土地・建物を相手方に譲渡しました。ところが、その後、私(譲渡人)に所得税が課されることが分かりました。土地・建物の財産分与を無効にすることはできますか?
  •  もし、課税されないことを当然の前提として財産分与を行ったといえるような事情があれば、財産分与としての土地・建物の譲渡の無効を主張できる可能性があります。
     財産分与を金銭(金銭債権を含む。)で行う場合は課税されませんが、金銭以外の資産で行う場合には譲渡人に譲渡所得が生じることになります(なお、譲り受けた側には原則として課税関係(贈与税)は生じません。)。
     単に譲渡人側が内心で課税されるとは思っていなかったというだけでは譲渡の無効を主張することは難しいといえますが、離婚協議の中で譲渡人側に課税されないことを前提として分与を行ったというような事情(課税されないと考えていることが暗黙にでも相手方に示されていたような場合)には、法律行為の錯誤(民法95条)として譲渡の無効を主張できる可能性があります。
     通常は、判決等で譲渡の無効を確認した後に、課税関係の処理を行うことになります。
     なお、当事務所で取り扱った案件の中には、財産分与としての不動産の譲渡以外の法律行為の場合にも、錯誤無効を主張し、課税がされないことになった事例もあります。

    取得時効と税

  • 取得時効によって財産(権利)を取得した場合、税金はかかりますか?
  •  かかります。
     取得者が個人の場合、取得したものの利益は「一時取得」となり所得税の課税対象になります。もっとも、「一時所得」とされるのは、取得した利益から50万円を控除した残額の2分の1に限定されます(所得税法22条2項2号、34条)。
     取得者が法人の場合、取得したものの利益は「益金」に参入されます(法人税法22条2項)。

  • 他人が時効取得したことにより、権利を失いました。その損失を所得から控除できますか?
  •  喪失者が個人の場合、原則として控除できません。例外として、事業所得者等であって、喪失した権利の目的物が事業用資産等である場合には、例外的にその物の取得費とされる金額に相当する額を必要経費に算入することが認められます(所得税法51条)。
     喪失者が法人の場合、失った権利の目的物の帳簿価格を特別損失として損金算入できます(法人税法22条3項)。

  • 時効取得した土地を譲渡した場合、譲渡所得の金額はどうやって算出するのですか?
  •  一般的に譲渡所得の金額は、以下の計算式で算出されます。
     「総収入金額(譲渡対価の金額の合計額)」-「譲渡した資産の取得費」-「資産の譲渡に要した費用」-「譲渡所得の特別控除額」
     土地を時効取得した場合は、土地の取得費は時効援用時の時価になります。
     なお、取得時効訴訟に要した弁護士費用等は、取得費にあたりません(東京地判H4.3.10)。また、時効取得による所有権取得を原因とする土地所有権登記手続請求訴訟に要した弁護士費用は、土地譲渡に要した費用には含まれません。

  • 訴訟で予備的に取得時効の主張をしているに過ぎない場合でも、所得税の申告は必要なのですか?
  •  必要です。申告しないと、無申告加算税・延滞税を課される可能性があります。
     訴訟の結果、申告の基礎事実が否定されたときは、事後的に更正の請求で対処することになります。

  • 法人が和解金を支払って時効取得による所有権の確認を得た場合、支払った和解金を損金に算入できますか?
  •  できません(大阪地判S54.4.26)。この場合の和解金は、完全な所有権を確定的なものとする対価として土地の取得原価を構成するものと考えられるためです。

    消滅時効と税

  • 消滅時効の時効期間が満了し、時効の援用によって債務を免れました。債務者が取得した利益はどのように処理されますか?
  •  債務者が個人の場合、取得した利益は「一時取得」となり所得税の課税対象になります。もっとも、「一時所得」とされるのは、取得した利益から50万円を控除した残額の2分の1に限定されます(所得税法22条2項2号、34条)。
     債務者が法人の場合、益金に算入されます。

  • 消滅時効の時効期間が満了し、債務者が消滅時効を援用した場合、債権者の損失はどのように処理されるのですか?
  •  債権者が個人の場合、事業遂行上生じた債権であれば「貸倒損失」として債権が消滅した年の必要経費に組み入れることができます。また、事業遂行上生じた債権でなければ、その年分の各種所得の金額の計算上なかったものとみなして、課税された年にさかのぼってその年の収入金額から控除することができます。
     債権者が法人の場合、損金に算入されます。

    共有物の分割と税

  • 共有物である土地を持分に応じて分割した場合、所得税はかかりますか?
  •  かかりません(所有権基本通達33-1の6等)。
     これは、
      共有物の分割は持分が各所有部分に集中するにすぎず、通常は固定資産の交換の特例(所得税法58条、法人税法50条)の要件を充足することが多い、
      この分割については資産譲渡による収益の実現があったとするに足りる経済的実質を欠く、
    などと考えられるためです。
     なお、分割された各々の土地の面積比と共有持分の割合とが異なる場合でも、分割後の各土地の価格比が持分割合と「おおむね等しいとき」は、分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。

  • 共有物分割について、課税対象となるにはどのような場合ですか?
  •  次の場合が挙げられます。
     ① 持分分割=隔地間の数個の土地について、共有者がそれぞれ単独所有権を取得することを目的として行われるもの
     ② 換価分割や持分に応じない現物分割
     ③ 全面的価格賠償の方法により共有物を分割する場合(最判平8・10・31)

  • 共有物分割と不動産取得税の関係はどうなりますか?
  •  不動産取得税は課税されます(最判昭53・4・11)。共有物の分割により他の共有者の有していた持分を取得することも「不動産の取得」(地方税法73条の2第1項)に当たるとされています。
     ただし、1個の共有不動産を共有持分に応じて単純に分割する場合は非課税となります(地方税法73条の7②の3)。

    共有者の死亡

  • 共有者が死亡して、その共有者に相続人がいなかった場合、その共有持分は他の共有者が取得することになりますが(民255条)、その場合の課税関係はどうなりますか?
  •  持分を取得した共有者が個人の場合は、持分取得の原因は遺贈によるものとして取り扱われ、相続税の課税対象となります。
     持分を取得した共有者が法人の場合は、取得した法人に益金が生ずることになります。

    共有持分の変動

  • 共有者の一人が持分を放棄しました。この場合でも課税はされますか。
  •  課税されます。
     共有者が持分を放棄した場合,税法上は,その持分を他の共有者に贈与したものとみなされます(相税9,相基通9-12)。したがって,贈与があった場合の課税関係と類似した扱いがされることになります。
     具体的には,① 放棄をしたのが個人の場合には,取得者に贈与税(相税1の4*個人の場合)又は法人税(法税22Ⅱ*法人の場合)が課せられることになります。
     また,② 放棄をしたのが法人の場合,ⅰ 取得者が個人の場合には,取得者に所得税(相税21の3Ⅰ①参照),放棄者に法人税(法税22Ⅱ)が課せられ,ⅱ 取得者が法人の場合には,取得者・放棄者いずれも法人税(法税22Ⅱ)が課せられることになります。

  • 死亡した父がマンションを所有しており,賃借人が付いています。父の相続人は子である私(兄)と弟だけです。父の死後,数年間の遺産分割協議を経て,マンションは弟の所有となりました。賃料についての課税関係はどうなりますか。
  •  相続が開始してから遺産分割協議が成立するまでの間については,あなた(兄)も相続分(2分の1)に応じて賃料債権を取得していることになりますので,それに応じた所得税が課されます。
     相続財産は,共同相続人の共有に属し(民898),相続財産から生じた賃料債権は,相続分に応じて(民899)各共同相続人に帰属します。その後,遺産分割が行われた場合,遡及効があるため(民909),分割内容に従って相続開始時からの権利関係が形成されることになりますが,賃料債権の帰属については,遺産分割の遡及効を受けないとされています(最判H17.9.8参照)。

    担保と税

  • 住宅ローンが支払えず,担保として設定していた抵当権が実行されることになりました。この場合でも,課税はされますか。また,任意売却の場合はどうなりますか。
  •  もし,抵当権が実行された時点で,住宅ローン残額を全て支払うだけの資金を調達できる見込みがないような場合には,所得税は課されません。任意売却の場合も,売却代金全部を住宅ローンの返済に充てた場合などには,所得税が課されないことになります。
     担保権の実行も譲渡所得の対象となりますが,一定の場合には非課税とされます。具体的には,競売等の強制手続の場合であれば,「資力を喪失し,債務を弁済することが著しく困難」(所税9Ⅰ⑩)といえる場合には,譲渡による所得について所得税が課されないことになります。これは,債務超過の状態が著しく,現在のみならず近い将来においても債務全部の弁済資金が調達できないと認められる状態をいうものとされ,その判断時期は,資産譲渡時とされています。
     また,任意売却など,強制手続以外の場合であっても,強制手続が避けられないといえる場合で,かつ,対価の全部(譲渡に要した費用は除きます。)が債務の弁済に充てられた場合には,譲渡による所得について所得税が課されないことになります。